

簿記3級の試験直前になっても、売上原価の意味がわからない。という方、いらっしゃいませんか?
私は2017年11月に簿記3級に合格しました。その当時、私も試験直前まで売上原価の問題が理解できずに本番でも解けるかわからない状況でした。
結局、売上原価の仕訳は「し~く~くりし~」・「うくうしくう」の語呂合わせを暗記。そして、売上原価の算定は「売上原価=期首の在庫+当期の仕入ー期末の在庫」の式を悪あがきの暗記して試験を乗り切ったのです。
しかし、合格から3年後に改めて簿記3級の復習をしてみました。復習に使った参考書「Let’s Start 新しい日商簿記3級テキスト」には、売上原価の理屈が説明されていました。簡潔でわかりやすい説明によって、あれだけわからなかった売上原価がやっと理解できたのです!
そこで、この記事では売上原価の仕訳と算定の理屈を解説します。
この記事を読めば、売上原価に関する問題に暗記不要で解けるようになります。暗記不要ということはそれだけ自信を持って試験本番に臨めるようになります!
売上原価の仕訳はなぜ「し~く~くりし~」と「うくうしくう」なの?
初めは、売上原価の仕訳についての解説です。売上原価の仕訳には、「し~く~くりし~」・「うくうしくう」と語呂合わせがあります。この語呂合わせから説明しますね。
暗記するしかできなかった「し~く~くりし~」と「うくうしくう」
決算整理の1つで「売上原価を求めなさい。」と出題されますよね。実際に売上原価を求める時は、次の仕訳をします。
期首の在庫●●円、期末の在庫××円、当期の仕入□□円の場合、
仕入勘定で算定しなさい。だったら仕訳は以下のとおりですね。
仕入 ●● 繰越商品●●
繰越商品 ×× 仕入 ××
「売上原価勘定で算定しなさい」と指示されれば、次のように仕訳を切ります。
売上原価 ●● 繰越商品●●
売上原価 □□ 仕入 □□
繰越商品 ×× 売上原価 ××
これらの仕訳を全部覚えるのはもう無理でした。そこで、語呂合わせで覚えることしたかできなかったのです。語呂合わせというのは、各勘定科目の頭文字をとって
「し(仕入)~く(繰越商品)~くり(繰越商品)し(仕入)~」
「う(売上原価)く(繰越商品)、う(売上原価)し(仕入)、く(繰越商品)う(売上原価)」
簿記受験者にはおなじみですね。当時は、なんでこういう仕訳と計算をするのか全くわかりませんでした。しかし、簿記3級合格後から3年後にもう一度復習をして、やっと理解できたのです。
仕入勘定を使った仕訳「し~く~くりし~」
それでは、「し~く~くりし~」の仕訳について説明します!
期首の在庫●●円、期末の在庫××円、当期の仕入□□円の場合
仕入 ●● 繰越商品●●(1)
繰越商品 ×× 仕入 ××(2)
この仕訳を初めて知った時は、「なんで繰越商品という勘定科目がでてくるんだ?」と疑問でした。
最近になってわかったのが、繰越商品って「在庫」と同じ意味なんですよね!
それがわかると、在庫は「経費」ではなく「資産」だ!と気づいたのです。
そして、期末の在庫××円が仕入勘定という「経費」で計上されたままではいかんやろ!と理解しました!
仕入(経費)から繰越商品(資産)に振り替えなくてはいけないから(2)の仕訳
繰越商品 ×× 仕入 ××(2)
という仕訳ができあがるんですね。
それから(2)の仕訳って前期の期末にも切っていますよね?
期首の在庫●●円は繰越商品(資産)で計上されているということですね??
ということは、先ほどの期末の話とは反対に期首の在庫●●円が繰越商品という「資産」で計上されたままではいかんやろ!というツッコミが入るわけです。
そのため、繰越商品(資産)から仕入(経費)に振り替えて(1)の仕訳
仕入 ●● 繰越商品●●(1)
という仕訳が出来上がります。
しかしながら、「なんで期首の在庫が資産で計上されたままではいかんのか?」って疑問が湧きませんか?( ;∀;)もう少し説明しますね。資産のままで計上したらいかん理由を理解するためには、「そもそも売上原価ってなんなのか?」ということを理解する必要があります。
売上原価とは「商品を売り上げる際にかかった経費」なのです。これがわかると、これから売れていく期首の在庫を資産として計上するのはあかん!ということがわかります。そのため、期首の仕訳は(1)のように切るのです。
「し~く~くりし~」の理屈が理解しづらいのは、参考書に書かれている仕訳が期首在庫の仕訳が先、期末在庫の仕訳は後にくるからです。(2)の期末在庫の仕訳→(1)期首在庫の順で仕訳を理解していけば頭もごっちゃにならないのですが(;´Д`)
売上原価勘定を使った仕訳「うくうしくう」
次に、「うくうしくう」でおなじみの売上原価勘定を使った仕訳について解説します!
期首在庫●●円、期末在庫××円、当期仕入□□円の場合
売上原価 ●● 繰越商品 ●●
売上原価 □□ 仕入 □□
繰越商品 ×× 売上原価 ××
この仕訳の理屈は、意外にも一言で説明できるんです!
仕入勘定が売上原価勘定にチェンジしただけ。
「し~く~くりし~」の仕訳
期首の在庫●●円、期末の在庫××円、当期の仕入□□円の場合
仕入 ●● 繰越商品●●
繰越商品 ×× 仕入 ××
の仕入勘定→売上原価勘定にチェンジさせると
売上原価 ●● 繰越商品 ●●
繰越商品 ×× 売上原価 ××
と上記のようになります。言葉が悪いですが当期の仕入分がお邪魔なので、さらに仕入勘定が売上原価勘定に振り替えられるのです。そこで、振替の仕訳を真ん中に追加させます。
売上原価 ●● 繰越商品 ●●
売上原価 □□ 仕入 □□
繰越商品 ×× 売上原価 ××
これにて、売上原価勘定を使った仕訳が完成です!
これまでの説明でわかりにくかった方は、売上原価勘定と仕入勘定が以下の絵のように入れ替わるところをイメージしましょう。

繰越商品勘定の立ち位置は変わりません。仕入勘定くんが売上勘定さんにチェンジされるだけ。その結果、仕入勘定くんは貸方へ追いやられている。と考えれば売上原価の仕訳も理解しやすいでしょう。
売上原価算定の計算式は在庫と仕入の流れを考えるとわかる!
次に、売上原価の算定についての解説です。その前に「売上原価の算定とは何ぞや?」というところから説明します。
公式として暗記するしかなかった売上原価の算定
売上原価を算定しなさいと問題が出題されれば、
売上原価=期首の在庫+当期の仕入ー期末の在庫
という計算式で解きますよね。簿記3級を受験した当時は、売上原価ってなんなのかよくわかっていませんでした。そのため、この算定の式が「なぜこうなるか?」なんて、もちろん理解できるわけがありません。
試験本番では、とりあえず上記の式を暗記することで乗り切りました。当時の私は、これを公式としか思っていなかったのです。しかし。簿記3級の復習をしてからその理屈がわかりました。
当時の在庫と仕入の流れを考える
売上原価算定の式を理解できるように、以下の絵を描きました。

上の絵で①~⑥と番号を振ってありますね。この番号は、当期の仕入と在庫の流れを表しています。この順番を追うと売上原価の算定式が理解できるのです!
以下から詳しく説明します。
当期の仕入と在庫の流れ
①期首在庫を資産のままで計上したらあかんやろ!ということで仕入に振り替えるんでしたね。
つまり、期首在庫分が仕入に追加されるのです。
↓
②仕入れた商品が売れたら仕入分を売上原価として算定します。
仕入額は売り上げのためにかかった経費だから!
↓
③仕入れた商品がなくなってくれば、また仕入れ。それによって、仕入が増える。
↓
この一連の流れをその後、 ④~⑥まで繰り返す。
そして、仕入れた商品の中で売れなかったものは期末に在庫(資産)として残ります。仕入は経費のままで計上したらあかんやろ!ということで繰越商品に振り替えられますよね。つまり、仕入から期末在庫は抜かれるということです。
それから、売り上げのためにかかった経費を合計させた値が当期の売上原価となります。
これまでの説明を簡潔な文章にまとめると、
当期の仕入額に期首の在庫分を加えて、期末の在庫分を抜くと売上原価の数字がわかるということ。
そして、それを計算式に書き直すと
売上原価=期首の在庫+当期の仕入ー期末の在庫
という式が出来上がるわけです!
以上のように、自分が実際に物を売ることを想定しながら仕入と在庫の流れを考えていくと、あまり難しく感じないですよね。そして、暗記をすることなく売上原価を求められます!!
まとめ
売上原価の仕訳と算定のポイントは以下の4つです。ポイントが理解できれば、売上原価算定の理屈がわかってきます。
・売上原価は商品を売り上げるためにかかった経費
・「し~く~くりし~」の仕訳は当期仕入の中に期末在庫が含まれているので、その分を繰越商品勘定で振り替えている
・「うくうしくう」の仕訳は仕入勘定を売上原価勘定にチェンジさせているだけ
・売上原価の算定は「当期の仕入に期首の在庫を加えて期末の在庫分を引く」ことで求められる
売上原価の算定の意味が分からなかった時は、なんとなくのうろ覚えの公式と語呂合わせと勘(?)で本番の試験を解きました。しかし、その意味が分かったときは本当にスッキリしました。
この記事の解説は、私が復習に使った参考書「Let’s Start 新しい日商簿記3級テキスト」に書かれています。
構成は、参考書と問題集がセットになったスッキリとした作りです。それにもかかわらず、要点は理屈の部分までしっかり説明されています。ただし、販売は2020年のみです。今後の改訂に対応できないところが難点です。
しかし、売上原価など従来からのつまづきやすい要点は、わかりやすく説明してくれます。参考になる点はたくさんあるので、ぜひ手に取ってみてください!
そして、「Let’s Start 新しい日商簿記3級テキスト」の概要は、こちらの記事でも紹介しています。ぜひ参考にしてください。
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