既卒栄養士が管理栄養士国家試験に合格するまでの10年の軌跡

既卒栄養士が管理栄養士国家試験に合格するまでの10年の軌跡

管理栄養士国家試験の合格に向けて、日々努力されている既卒栄養士の皆さん。働きながら勉強するのは大変ですよね。

「いつになったら管理栄養士になれるんだろう?」と思い悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私は、当ブログの運営者・モンと申します。資格勉強が趣味で、自分が取得した資格の体験談をメインに書いています。

今回は趣向を変えて、管理栄養士国家試験に合格した知人の体験談を書いてみることにしました!

知人は既卒栄養士として働きながら管理栄養士を目指していました。管理栄養士になれるまでにかかった時間は、なんと10年

この記事では、既卒栄養士だった知人が管理栄養士国家試験に合格するまでの10年間をまとめています。

「10年かかった人もいるのか!自分も頑張ろう」と思っていただければ幸いです。既卒栄養士さんにとって勉強の励みになりますように!ぜひ、最後まで読んでください!!

この方にお話を聞きました!

お話を伺った知人、しおあじえんみさんを紹介します。

しおあじえんみさんの紹介

2010年、栄養士養成の短大卒業後、給食受託会社に就職。
2013年から管理栄養士国家試験受験資格を得て予備校に通う。
初めての国家試験で4点足りず不合格。結婚を機に管理栄養士国家試験を諦める。
7年後、管理栄養士への熱意が復活。再受験を決意。
半年間勉強を続けて、第35回管理栄養士国家試験に合格。

しおあじえんみさんは、短大卒業後からずっと同じ給食受託会社に勤めています。現在は、厨房を仕切る栄養士さんとして活躍されています。

それでは、しおあじさんの10年間の軌跡。はじまりはじまり~!!

厨房業務から抜け出したくて臨んだ初めての管理栄養士国家試験

しおあじさんは短大卒業後、栄養士免許を取得。給食受託会社に従事したことで管理栄養士国家試験受験資格を取得しました。

そして、初めての管理栄養士国家試験を迎えるのです。

しおあじさんが社会人になってから、管理栄養士国家試験を初受験するまでの経緯を紹介します。

栄養士として採用されたものの仕事は厨房業務だった

しおあじさんは給食受託会社の栄養士として採用されました。しかし、就業形態は非正規雇用。おまけに、メインの仕事内容は厨房業務

厨房業務のイメージ図。Robyn WrightによるPixabayからの画像

「管理栄養士国家試験の受験資格を得るために、まずは3年間栄養士業務をやらなければ。」

短大卒業の方が管理栄養士国家試験を受験するには条件があります!

「特定多数人に対して継続的に食事を供給する施設で3年以上栄養の指導に従事する。」
この条件を満たすと、管理栄養士国家試験の受験資格がもらえます。
参考:厚生労働省ホームページ「管理栄養士国家試験」

短大を卒業が近づく頃は、そう思っていました。しかし、現実は厨房業務がメイン。栄養業務を任されるまで、数年はかかるのです。

辞めたいのを我慢して管理栄養士国家試験受験資格を取得

非正規雇用で収入は安定しない。憧れていた栄養士業務ができない。

しおあじさんは、覚悟して給食受託会社に入社しました。しかし、厨房業務は理想からかけ離れていました。

早番の日は朝4時に起きて出勤。給料が安定していないため、一人暮らしの生活費を捻出するのも大変。何度も心が折れました。

しかし、「管理栄養士になれば、この日々から抜け出せる」と思いながら辞めたい気持ちと戦っていたのです。

そして、なんとか耐え続けて3年が経ちました。やっと、管理栄養士国家試験を受験できるのです。

管理栄養士受験対策予備校で勉強開始

管理栄養士国家試験の受験資格を得てからしおあじさんがすぐにやったこと。それは、通信講座への申し込みでした。申し込んだ先は、「SGS総合栄養学院(以下、SGS)」です。

SGS総合栄養学院とは?

管理栄養士国家試験対策に従事している商工技能振興会(SGS)株式会社が運営している予備校
参考:SGS総合栄養学院ホームページ

仕事終わりと休みの日は、SGSの教材で勉強。音声講義を聞いて問題集を解くことを繰り返しました。

数ヶ月に1回はスクーリング。SGSの講義は頭に入りやすいそうです。

特に講師の安部隆夫先生が教えてくれたゴロや暗記の仕方はとてもわかりやすく、後の再受験までずっと記憶に残るほどでした。

SGSのお陰で順調に合格できるのではという気がしますね。しかし、この時のしおあじさんは「実は、本気になれなくて、なんとなくで勉強していた」と振り返っています。

しおあじえんみさん
しおあじえんみさん

厨房業務の経験しかないので、本当の意味で自分が管理栄養士になるという実感が湧かなかったんですよね。

管理栄養士になったら厨房業務から抜け出せると思っていたはずなのに。

合格点まで4点足りなかった初受験

結局、初めての管理栄養士国家試験は勉強不足を感じたまま挑むことに。それでもSGSのおかげもあり、受験後は合格圏内に入りそうな手ごたえを感じたそうです。

管理栄養士国家試験試験会場イメージ図

しかし、結果は合格点まで4点足らず。「これ以上、努力を続けることに疲れた」とすっかり意気消沈してしまいました。

しおあじさんは、ここで初めての挫折を味わったのです。それから7年間という長いブランクを経ることになります。

しおあじえんみさん
しおあじえんみさん

今となっては、完全に自分の努力不足だったと思っています。

管理栄養士への情熱はどうなる!?栄養士業務に従事した7年間

初めての管理栄養士国家試験は不合格。しおあじさんは、勉強を続ける意欲をなくしていました。そんな時に、念願だった栄養士業務を任されることになったのです。

正社員登用と結婚

しおあじさんは、仕事は辞めずに続けることにしました。それが功を奏したのか翌年、正社員登用の話が舞い込みました。

正社員登用と同時に、異動先で念願だった栄養士業務もやらせてもらえることになったのです。

そして、正社員登用後から1年も経たないうちに、お付き合いしていた男性との結婚の話がまとまりました。しおあじさんの新しい生活の始まりです。

「正社員として栄養士業務がしたい」という念願が叶い、充実した気持ちで過していました。

しかし、栄養士業務は覚えることが多くて大変。さらに、結婚したばかりで主婦業とも両立しなければなりません。

この時期は、かなり忙しかったとしおあじさんは振り返っています。

栄養士業務に慣れるまでが長かった

これまでこなしていた厨房業務に加えて栄養士業務を覚える。二足のわらじは、慣れるまでにかなりの時間が必要でした。

この頃は、管理栄養士国家試験のことを考える余裕がなくなっていたそうです。

これまで調理の経験しかなく、仕入など数字の管理をする業務は全く経験がありませんでした。新しい分野の業務が増えて戸惑いの連続。

初めの頃は、食材の仕入の数を間違えて同僚に責められることもありました。

栄養士は、委託先の施設に従事している管理栄養士(以下、直営栄養士)や厨房員とのコミュニケーションを取らなければなりません。

直営栄養士の指示を聞いて、厨房員に指導をする。これが一番難しい。

直営栄養士が話していることが簡単に理解できない。相手は栄養学の知識や現場の経験があるけど自分にはない。

しおあじさんは、直営栄養士と今の自分の違いを痛感しました。そして、惨めな気持ちになる一方でした。

厨房員は、年齢も経験も自分より上回っている人ばかりです。自分の指示が簡単に通らないこともありました。

厨房業務よりも人間関係でストレスを感じることが増えました。しかし、しおあじさんはめげることなく努力を重ねたのです。

とにかく栄養士業務の内容や栄養学の知識を覚える現場の状況を自分が一番把握する。これらのことを心がけるようにしました。

栄養学の知識不足を実感

現場の状況が把握できて、食材の仕入ミスがなくなるようになりました。しかし、直営栄養士とのやりとりでは、知識不足を実感する日々。

おまけに、直営栄養士は管理栄養士保有者ばかり。自分は栄養士免許しか持っていなくて、形見が狭い。

「現場責任者という立場なのにこのままでいいのだろうか?」

そんな疑問が浮かび、「管理栄養士になりたい!」という思いが芽生え始めました。

さらに、「利用者のためになる食事を提供したい」という思いが、しおあじさんの「管理栄養士になりたい」という気持ちを強くさせました。

栄養士業務に慣れてくると、ある目標ができました。

「安心安全で効率の良い給食運営をして、委託先の利用者のQOL向上を目指す食事を提供したい」

「利用者のQOLの向上を目指す食事を提供したい」という思いが管理栄養士国家試験への思いを再燃させた

管理栄養士国家試験の再挑戦を決意!

「直営栄養士と対等に打ち合わせがしたい。」

「利用者のQOL向上を目指したい。」

仕事をする上での希望を叶えるためにはどうしたらいいのか、しおあじさんは考えました。そこで出た結論が、管理栄養士の知識をちゃんと身につけること

「管理栄養士を取得すれば、本社や現場職員からの信頼も高まるのではないか!」

再び管理栄養士へのキャリアアップを目指すことに決めました。

紆余曲折だった管理栄養士国家試験再挑戦

「管理栄養士を目指す!」と決意したしおあじさん。初受験の時にやっていた勉強方法を見直しました。

そして、自分に合った勉強方法を確立。過去問の得点が上がりました。しかし、受験本番直前。まさかの自体に見舞われたのです。

自分で発見した勉強方法で点数アップ

しおあじさんが見つけた勉強方法は、「ひたすら過去問を解く」ことでした。詳しい勉強方法は、こちらの記事に書いています。ぜひ、参考にしてくださいね。

既卒合格者に聞いた! 既卒栄養士が働きながら管理栄養士国家試験に合格するコツ!!

過去問演習は、「過去問.com」というサイトを利用することにしました。パソコンで演習する方がやりやすいと判断。そして、思い切って机とパソコンを購入したのです。

しおあじさんの勉強机。勉強をしやすい環境を整えるために机とパソコンを思い切って購入。机の下にいるのは愛犬のシュナウザーくん(笑)

過去問を重視した勉強方法によって、過去問や模試の得点が一気に上がりました。しおあじさんは、半年で合格圏内に到達したのです!

「今度こそ合格してやる!」

そう意気込んだのに、思いも寄らない事態を迎えました。

試験本番3日前に緊急事態宣言発令

しおあじさんの合格が目の前に見えてきた頃。同じ時期に新型コロナウイルスの感染拡大が始まりました。

しおあじさんの会社は病院に委託されています。職場は病院です。コロナウイルスの脅威に不安はありました。

でも、「ここまで頑張ってきたんだから感染防止をしてなんとしてでも受験会場に行きたい。」

しかし、その思いは打ち砕かれました。試験本番3日前にまさかの緊急事態宣言発令。事態は思っていたより深刻だったのです。

涙の再受験見送り

試験会場に行きたい。でも、病院に勤務している以上は、コロナに感染するわけにはいかない。

「今までの努力はなんだったのか」と泣きながら、試験前日まで行くか行かないか考え続けました。結局、受験を見送る決断したのです。

ちなみに、この決断をTwitter上でツイートした時、新卒の受験生に「逃げ」だと罵られました。これまでにないくらい涙が止まらなかったそうです。

しおあじさんはこの出来事に対して、次のように振り返っています。

しおあじえんみさん
しおあじえんみさん

現場で働いている既卒栄養士として、万が一未知のウイルスを現場に持ち込んで利用者・患者・職員の迷惑になることを考えると受験出来なかった。

執筆者の私も当時、Twitterで管理栄養士国家試験に関する情報をチェックしていました。

現場で働く既卒栄養士さんの多くが、しおあじさんと同じく「受験したいけど、自分の職場にコロナウイルスを持ち込むかもしれない」とツイートしていました。

そして、「泣く泣く受験を見送った」とツイートした方がたくさんいたのです。コロナウイルスによって、多くの受験者が希望を削がれました。

執筆者・モン
執筆者・モン

私はしおあじさんが努力しているところを近くで見てきました。しおあじさんには、合格祈願のお守りも渡してたのです。その矢先の緊急事態宣言発令。自分のことのように心が痛みました。

「絶対合格してやる!」再受験を誓った1年間

まさかの受験見送りに大泣きした翌日。燃え尽き症候群のような脱力感に襲われました。

しかし、しおあじさんは、ここから再受験に向けて再起するのです!

Twitterのフォロワーさんのお陰で再受験を誓う!

受験を見送ったのは自分だけじゃない。自分と同じ既卒栄養士で受験を見送ったフォロワーさんがたくさんいたのです。

フォロワーさんからのリプで、「辛いのは自分だけではない」と気づきました。

しおあじさんを救ったTwitterのロゴ

そして、「さらに1年間勉強して確実に合格できるレベルになるまでやってやる!」と決意しました。

その後は、過去問演習を重ねる日々。さらに正答率を上げるためにひらすら演習に取り組みました。

過去問演習では、「過去問.com」の他にスマホアプリも利用するように。

試験本番の2か月前からは「GUPPY」というアプリを使い、掲載されている全9科目、10年分の問題を全て解きました。

※現在、GUPPY(管理栄養士)では5年分の過去問を出題しています。

関連記事:既卒合格者に聞いた!管理栄養士国家試験におすすめ学習アプリ2選

参考:「過去問.com(管理栄養士)」公式サイト
(無料)管理栄養士の過去問を提供「解説あり」 – 脳に定着させて絶対合格 (kakomonn.com) 

参考:「GUPPY(管理栄養士)」公式サイト
管理栄養士 国家試験&就職情報【グッピー】 | 株式会社グッピーズ (guppy.jp)

コロナウイルス感染も覚悟してリベンジを決意

まさかの受験見送りから1年、管理栄養士国家試験の時期が来ました。

1年経てばコロナウイルスの感染拡大もおさまるだろう。そう予想していたのに考えが甘かった。事態は前年よりも悪くなるばかり。

「こうなったらもう職場に持ち込まないようにとか言ってられない!」
「どうしても管理栄養士になりたい!!」
しおあじさんは、昨年と同じ思いはもうしたくないという一心で受験を決意

管理栄養士になりたいと思い立ってから10年。厨房の仕事から始まって、正社員に登用。そして、栄養士業務を任されるようになった。

受験を1年見送ってからも、さらに1年勉強を続けてきた。今までの経緯を思い出すと「もうここで受かりたい」という強い希望が湧いてきました。

極度の緊張を抱えながらいざ、再受験!

希望を持って本番を迎えたしおあじさん。しかし、「本番の緊張で押し潰されそう」という強い不安に襲われました。

不安で緊張はピークに。試験当日は、会場へ移動する時のタクシーの中で少し泣けてきたそうです。

そして迎えた試験本番。受験者を惑わす選択肢がたくさんありました。

手応えはあるようなないようなと曖昧なかんじ。モヤモヤした気持ちのまま自宅に帰りました。

しかし、翌日の自己採点では142点という数字が見えたのです!

合格圏内に入った!

合格発表当日まで結果はわからないものの大きな希望が見えました。

執筆者・モン
執筆者・モン

管理栄養士国家試験は6割得点すれば合格です。つまり、200満点中120点以上で合格です。

10年目の正直、いよいよ合格発表

試験から約1ヶ月後、いよいよ合格発表を迎えました。合格発表は、厚生労働省のホームページで合格者の受験番号が掲載されます。

「自己採点の結果どおりにいくだろうか?」とドキドキしながらパソコンに張り付きました。

しかし、予定の時刻になっても合格発表の画面が更新されない。何度も更新ボタンを連打しまくることに。

約30分後、ついに合格者の受験番号が表示された!

結果は、、、

合格発表画面としおあじさんの受験票。合格を確信した瞬間だった。

すぐに自分の受験番号が目にとまった!

やっと合格できた!!

執筆者・モン
執筆者・モン

合格発表の瞬間、私もパソコンとにらめっこしていました。しおあじさんが合格した時は自分のことのように嬉しくて泣きそうになりました!

Twitterでやりとりしていたフォロワーさんからは、祝福の言葉をもらえました。

一年間を見守ってくれていたフォロワーさんには、こう言ってもらえたそうです。しおあじさんは、この言葉が1番嬉しかったとのこと。

しおあじさんのフォロワーさん
しおあじさんのフォロワーさん

しおあじさんが受験を断念した時には首をかしげました。でも、勉強期間中でも喫食者・職員の健康を考えながら仕事をして、合格を迎えた今は尊敬しかない。給食や喫食者に対する思いは鑑だと思う

管理栄養士になりたいと思ってから10年。しおあじさんは、長い長い道のりにやっと終止符を打ちました。

おわりに~既卒受験で管理栄養士を目指す皆さんへ~

管理栄養士免許の登録も終えて、正真正銘の管理栄養士になれたしおあじさん。

職場での仕事内容は相変わらず。しかし、資格手当が支給されて年収がアップしたそうです。

管理栄養士を取得してからは仕事での待遇が良くなっただけではありません。知識も付いて自身を持って仕事に励めるようになりました。

さらに、勉強の楽しさにも目覚めたそうです。さらに知識を増やそうと、給食経営の知識を極めることにしたそうです。

しおあじさんは、既卒栄養士として働きながら勉強してきました。途中、勉強から離れた期間はありました。

管理栄養士になりたいと思ってからかかった時間は10年です。私から見ても、大変だったと思います。

しかし、その大変さはしおあじさんに勉強の楽しさを教えてくれました。

管理栄養士を目指す皆さんも辛いなと思う日があるかもしれません。しかし、「苦」が「楽」に変わることもあるのです。

目標を持ちながら得た知識は、必ず自分に返ってきます。諦めずに勉強を続けていきましょう!


この記事の他にも、管理栄養士国家試験の勉強法をまとめた記事を書いています。

しおあじさんが実際に点数が上がった過去問の解き方の解き方をまとめた記事もありますよ。ぜひ参考にしてくださいね。

管理栄養士国家試験合格者に聞いた!点数が上がった過去問の解き方

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